intaview: 2013年8月アーカイブ
巻上公一
「あしがら未来音楽フェスティバル」を語る
来る8月24日(土)午後、神奈川県の開成町で地元有志による野外ロック・フェスティバルが開催される。地域としては初の試みで、出演はヒカシュー、石橋英子ともう死んだ人たちのほか、特別ゲストとして坂田明が加わる。入場無料。
開催のきっかけ
元開成町町長で先の参議院線にも出た露木順一と、湯河原町の海際に建つ中学校の危険性について意見交換していたのがきっかけです。彼は高校の同級生で、開成町南小学校という素晴らしい学校を建てたことで有名で、いい学校を建てれば、そこにいいいい人が集まるという考えで行動したんですね。そしてそれはまさにそうなって、神奈川県で一番小さな町にもかかわらず人口増加中なんです。
湯河原は、町長も議会も何をしてるんだろう、子どもを大事にしないところは誰からも信用されない。それにアーティストがたくさん住んでいるのになぜ活用しないのか。
そんな話の中、いずれ開成町でもヒカシューのコンサートをしようよ、という話になった。
彼はとてもスピード感があって、早速花火大会にできないだろうかという提案してきた。
とてもありがたい話で嬉しかったんだけど、せっかくだから毎年できるようにフェスティバルにしようって、今度はこちらから提案しました。
その後は彼がどんどん話を進めてくれて、地元の人たちに声をかけて実行委員会を組織したり、自治体にかけあって予算も確保してきてくれたんです。つまり、彼が積極的に動いてくれたおかげで、実現できたイベントなんですよ。
露木の素晴らしさは、自分の感性を信じていることです。そして凡庸な批評にとらわれず実行することだと思います。これは最も日本人に欠けている態度で、大抵が他人の批評ばかりを気にしていて、行動が姑息になってしまう。
夜には花火大会も
こういう野外コンサートっていうのは、地域としても初めての試みなんです。会場は河川敷で、普段は野球場とかもある場所なんですが、そこに特設ステージを設置します。
同じ日の夜には花火大会もあって、そちらは毎年恒例の行事なんですけど、それにもうひとつ新たな要素が加わるという感じですね。
それから、早い時間にはワークショップも開催します。ぼくも口琴のワークショップで講師をやりますし、ほかに火起こしのワークショップもあります。ステージの前半は、地元のアマチュアバンドが演奏しますが、そちらにはぼくは関わっていません。
後半はぼくのプロデュースなんですが、石橋英子さんともう死んだ人たち、それから坂田明さんに出てもらうようお願いしました。元々、アート・ロックのイベントにしたいと考えていたので、このメンバーに決めたということです。
今後も継続させるために
先ほども話に出ましたが、このフェスティバルは一回きりのイベントじゃなくて、今後も続けていきたいと思っています。それもあって、複数のアーチストに出演をお願いしたわけです。
坂田さんには、ヒカシューのライブにゲストとして登場してもらいます。何しろ坂田さんは大変なエンタテイナーですから、きっと特別なステージになるでしょう。
それから、こないだのワールド・ハピネスでヒカシューを知ったという皆さんにも、ぜひ来てもらいたいですね。無料ですし、同じ屋外のイベントですので。それと、この後はしばらく関東ではヒカシューのライブがないんです。次は10月になりますから。
都内からも小田急線でそんなに遠くないですし、今後も継続して開催していきたいので、ぜひ皆さんで来ていただければと思います。
8月24日(土)
あしがら未来音楽フェスティバル
http://ashigarammf.web.fc2.com
開成水辺スポーツ公園 特設ステージにて開催
神奈川県足柄上郡開成町吉田島
小田急線新松田駅 あるいは開成駅から
ツイッターのアカウントはこちら
infoashifes@gmail.com
巻上公一
「喉歌のふるさと」コンサートを語る
アルタイ共和国のカイ、トゥバ共和国のホーメイという、シベリアの喉歌における二大潮流が一堂に会するコンサートが、今年9月に東京と大阪で開催される。両共和国の歌手が同じステージに立つのは本邦初のこと。あわせて、その前後にもアルタイ、トゥバの歌手によるツアーがそれぞれ実施される。
ツアーのきっかけ
今回の企画は、もともとぼくがアルタイとトゥバの喉歌歌手を一緒に日本に呼びたいと思っていて、そこから始まっているんです。そのアイデアに、いろいろと賛同してくれた人たちがいて、おかげで何とか実現できました。
双方の歌手がそろって出演するのは東京(高円寺)と大阪ですが、その前後にも各地で演奏します。前半がアルタイ、後半ではトゥバの歌手がそれぞれ出演しますが、こちらの方もいろいろと趣向を考えてありますので、ぜひ期待してほしいですね。
アルタイを代表する歌手ふたり
アルタイ共和国からやってくるのは、ボロット・バイルシェフとタンダライで、二人とも本国ではまさしくスーパースターといえる歌手です。この人たちが共演するというのは、アルタイでも滅多にないことなんですよ。このうちタンダライは初めての来日になります。
ボロット・バイルシェフは、ぼくと佐藤正治との3人でアヤ(AR)というグループをやっているんですが、コンサートはそのアヤのライブにタンダライが加わるという形になるかと思います。
タンダライは女性の歌手で、これはトゥバでも同じなんですが、女性の喉歌歌手っていうのは本当にめずらしいんです。アルタイでもプロの喉歌歌手で女性は2人くらいしかいません。そのひとりがタンダライで、大変に貴重な存在なんです。
もちろん貴重な存在だというだけじゃなくて、タンダライは歌手としての技量にも大変なものがあります。たとえば鳥の鳴き声を出してみたりするんだけど、もう何十種類もできてしまう。その表現がまた実に素晴らしい。5オクターブの声を出すとも言われているんですが、それはつまり、彼女がやる鳥の鳴き声を描写した言葉なんです。それだけ幅広い表現をする歌手だということですね。
トゥバからは本年度のグランプリ受賞者が来日
トゥバからは4人来日します。モングンオール・オンダールと、それからユジュムという3人組のグループです。
モングンオール・オンダールは、今年春にトゥバで開かれた第6回国際ホーメイ・シンポジウムでグランプリを獲得した歌手です。彼は以前、1992年に開かれた第1回シンポジウムでもグランプリを獲っているので、2度目になりますね。その時は16歳くらいだったんですが、それから20年後にまた受賞したわけです。2000年にも来日していますが、その時から比べても、めざましく進歩しています。
ユジュムは歌手のオトクン・ドスタイが率いるグループで、メンバーはたびたび変わるんですが、今回の来日公演にはアヤス・クーラルとアンザット・クーラルが参加します。彼らもとても優れた歌手で、アヤス・クーラルは政府が運営しているトゥバ・アンサンブルのリーダーでもあり、とにかく上手い。アンザット・クーラルは女優でもあるんですが、民謡の歌手としても実績のある人です。
この4人も、そもそも揃って演奏するというのがありえない人たちなんです。たとえトゥバに行っても一緒には聞けません。それくらい特別な組み合わせです。
単独公演では、たとえば横浜のみなとみらい小ホールで実施するコンサートでは、特別なやり方をしようと思っています。というのも、400人くらい入る会場なんですが、音がとてもいいので、PAをなるべく使わないようにしたいんです。できるだけ生音で体験してもらおうということですね。
それから、ホーメイだけじゃなくてトゥバ自体に興味があるという人におすすめなのが、新潟での公演です。これは東京から来る人たちにも参加しやすいように、泊りがけのイベントとして企画したもので、ホーメイに加えて、メンバーとの交流会も実施します。トゥバに行く以外では、おそらく一番トゥバに近い催しになると思います。もちろんぼくもいますので、何か質問があったら遠慮なく聞いてほしいですね。
両共和国の喉歌が一度に聞ける歴史的なコンサート
それで、東京と大阪で全員が集まるわけですけど、アルタイとトゥバの歌手の合同公演じたい日本ではおそらく初めてですし、なにしろこの顔ぶれですから、これは本当にすごいことになるでしょうね。まさしく歴史に残るイベントになりますよ。
アルタイのカイと、トゥバのホーメイを同じ場所で聞けるわけで、その違いもよく分かる。その意味では一種の研究公演でもあるわけですが、とにかく滅多にない機会ですので、ぜひ体験していただきたいと思います。
公演日程
ボロット・バイルシェフ、タンダライ、佐藤正治、巻上公一
8月31日 開成町 瀬戸屋敷 2:30pm
9月1日 沼津 Music la Festa「FUN」
9月2日 浜松 窓枠「AOZORA」
ボロット・バイルシェフ、タンダライ、モングンオール・オンダール ユジュム
ナビゲーター 巻上公一
9月8日 大阪 民族学博物館 13:30から16:00(無料 往復はがきで申込 8月16日締切)
9月10日 東京 座・高円寺2
モングンオール・オンダール、オトクン・ドスタイ、アヤス・クーラル、アンザット・クーラル
ナビゲーター 巻上公一
9月12日 前橋 大蓮寺 本堂
9月14日 新潟 十日町 三省ハウス(宿泊パック)
9月15日 甲府 桜座
9月16日 東京 六本木 新世界 開場14:30 開演15:00(ホーメイWS、ミニライブ)
9月18日 横浜 みなとみらい小ホール
各公演の詳細はこちら
http://www.bloc.jp/makigami/