Bookの最近のブログ記事

翻訳者・清水一登 大いに語る
ジョン・スティーブンスの即興ワークショップ教本『探求と熟考』の面白さ

11月17日(土)に説明会が予定されている、ジョン・スティーブンスの著書『探求と熟考』に基づく音楽ワークショップ。
講師のひとりであり、教本の翻訳を担当した清水一登が語る、その面白さとは。


ジョン・スティーブンスについて

もう亡くなっているんだけど、イギリスのジャズ・ドラマーで、スポンティニアス・ミュージック・アンサンブルっていうグループを長くやっていた人で、録音もたくさんあります。彼は本当にいろんな人と共演していて、デレク・ベイリーとか、エヴァン・パーカーみたいな、イギリスの即興音楽で中心にいるような人たちとは、たいてい何らかの形で関わりがあります。

彼はまた、地域活動にとても熱心で、イギリスのあちこちで興味のある人を集めて、まったく前提のないところから、みんなで即興演奏を楽しむというワークショップを長年続けていたんですよ。この本もそうした活動から生まれたものなんです。

つまり、本が先にあったわけじゃなくて、ワークショップをずっとやっていた彼の経験から、こういう場合にはこういうやり方が面白い、みたいなことを積み重ねて、ひとつにまとめたものなんです。いわば、ジョン・スティーブンスの即興ワークショップの報告書ともいえる本なんですよ。


音をよりよく知るために

本の中身はふたつに分かれていて、第1部がリズム編、第2部が即興演奏編になっています。

まずリズム編では、即興演奏をみんなでやるために必要となる技術とか、考え方について説明してあって、当然ですけどリズムが中心になっています。

どんな内容かというと、たとえば序文にこういう話が出てきます。

二人の人間が歩きながら会話しているという場合を考えてみると、歩調はひとりずつ違うじゃないですか。歩調の違うふたりが会話をするためには、歩調はともかく、同じ速度で進まないと会話は成立しないわけですよね。それで、即興演奏でのリズム的な関係もそういうものだというんです。そういうところから話を始めているんですよね。

そうやってリズムについて説明した後で、次に音程について話すんです。そこにもいろいろ内容があるんだけど、たとえばスケールっていうのは、これまであった文化と関係していますよね。これはもう、どこでも同じで。世界各地に、いわゆる音階っていうものがありますけど、この本に出てくるのは、そういう既成の文化にある音階ではないんです。音階っていう概念を最初に扱うときに、ジョン・スティーブンスはどういうところから考えたかっていうと、微分音程から始めたんですよ。実に興味深い。

たとえば平均律とか、インドのラーガとかにしても、それは特定の文化の中で育まれたひとつの体系であって、なにもそれにこだわる必要はないぞ、ということなんです。


楽器の経験はいっさい不問

具体的にどういうことをやるかっていうと、まずリズムだと、誰かが1って言って、その人の次に誰か2って言ったとすると、それでテンポが始まるわけですよね。それで、練習ではまず誰かが1って言って、2番目の人が2って言う。そこから先は、なるべくそれと同じ間隔になるようにして、次の人は1と言ってみる。そういうやり方から始めて、リズムっていうものを理解していくんですよ。

音階だと、まず「ファ」と「ファ#」があるとすると、その間をなぞっていく。つまり、「ファ」から「ファ#」にゆっくりと移っていくっていう、そういう練習から始めるんです。これは、歌でやります。

楽器できる人でも、基本的には歌でできないとダメなんです。なぜかっていうと、楽器にはそれ自体のイディオムが必ずついてくるから。音そのものを理解することに重点が置かれているので、最初はまず、とにかく楽器をもたないで始めちゃうんですよ。

そもそも、リズムについて説明するのに、先ほど出た、ふたりで歩いているときの話とか、そういうところから説き起こしていく感じなんです。だから、楽器を演奏した経験があったとかなかったとかっていうのは、もう全然関係ないし、前提条件にもなっていない。むしろ、楽器の未経験者の方が自然に入れそうなところもあるくらいで。


最終目標は、音楽作品を作ること

このワークショップの特色は、その中でひとつの音楽作品が作れるってことなんです。つまり、なにを目標にしているかっていうと、複数の人間が集まって、全員が全員の音をちゃんと聴きつつ、それで自分なりの演奏ができる、というような状態を目指すわけですよ。

何度か繰り返して、いろんな技術を身につけていくうちに、自分たちのオリジナルの音楽作品をものにすることができる。そこが、このワークショップの魅力的なところだと思います。

また彼の考えは、いい悪いで判断しないということが基本になっていて、それが重要なところなんです。おそらく、彼もドラマーをやっていて、やっぱりバカにされたりとかあったんじゃないかな。そういうことから、どうやれば他人の演奏に対してジャッジを下したりせず、だけども耳をすませていられるか、みたいなことを考えたんじゃないかな、と思うんですよね。

それで、この本には、集団即興演奏っていうものにどういうやり方で向かっていくのか、そのための手がかりがたくさん入っているんです。ワークショップでは、そうした手がかりをいろいろと試してみて、学ぶことができる。

彼は長年そういうことをコミュニティでやってきたわけです。そこに参加してくれた普通の人たちにとって、とてもメリットのあったものを書き連ねているわけですから、その効果は実証されています。


説明会について

説明会では参加者向けにテキストを用意する予定ですが、まずはさっそく始めてみるつもりです。なにしろ、本がそういうことを奨励していますから。

この本を眺めていても仕方がない。複数の人間を集めて、やってみることで意味が出てくるんだという、そういう考え方ですね。だからもう、どんどん、やってっちゃうと思います。

来る11月17日(土) 17:00start 18:00まで 場所 いずるば(多摩川線沼部下車徒歩5分)
アクセス>>>
「探求と熟考」新年ミュージックワークショップの説明会を行います。
講師 清水一登 巻上公一
参加費 500円
詳しくはこちらまで

アルクの月刊日本語1月号に巻上公一のインタビューが載りました。

interview_b.jpg

THE BIG ISSUE JAPAN130号巻頭のリレーインタビューに
巻上公一のインタビューが載っている。

ビッグイシューは駅近くなどで販売者が手で売っています。

http://www.bigissue.jp/backnumber/bn130.html

国立国際美術館で新国誠一の具体詩の特集が組まれている。
http://www.nmao.go.jp/japanese/b2.html
それに合わせて
新国誠一works-1952‐1977が出版され、
新国誠一の全貌を知る機会に恵まれました。


今日、田口ランディさんの新刊「パピヨン」が発売されました。
田口さんとはご近所ですが、エリザベス・キューブラー・ロスの看取りの研究を取材している時に
お父様の末期ガンと向かい合うことになってできた本とのことです。

角川学芸出版HP
http://www.kadokawagakugei.com/detail.php?p_cd=200809000524

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうちBookカテゴリに属しているものが含まれています。

次のカテゴリはCDです。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01